事務所ニュースVol.254 02.01時間外労働の上限規制
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2020年1月1日
事務所ニュース Vol.254
≪時間外労働の上限規制≫
2019年4月1日から労働基準法の改正により、大企業には既に時間外労働の上限規制が敷かれています。中小企業は1年間適用を猶予されていましたが、2020年4月1日より中小企業にも適用されます。今回は時間外労働・休日労働の基礎から改めておさらいします。
労働時間・休日労働に関する原則
労働基準法では、労働時間は原則として、1日8時間・1週40時間以内とされています。これを「法定労働時間」といいます。また、休日は原則として、毎週少なくとも1回与えることとされています。これを「法定休日」といいます。
●法定労働時間を超えて労働者に時間外労働をさせる場合や法定休日に労働させる場合には、労働基準法第36条に基づく労使協定(36(サブロク)協定)の締結と所轄労働基準監督署長への届出が必要です。
●36協定では、「時間外労働を行う業務の種類」や「時間外労働の上限」などを決めなければなりま
せん。36 協定で定める時間外労働については、厚生労働大臣の告示によって、上限の基準が定めら
れていましたが、臨時的に限度時間を超えて時間外労働を行わなければならない特別の事情が予想さ
れる場合には、特別条項付きの 36 協定を締結すれば、限度時間を超える時間まで時間外労働を行わ
せることが可能でした。
改正内容(時間外労働の上限規制)
今回の改正によって、法律上、時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間となり、臨時的な特別の事情がなければこれを超えることができなくなります。臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合(特別条項)でも以下を守らなければなりません。
・時間外労働が年720時間以内
・時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
・時間外労働と休日労働の合計について、「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」「6か月平均」が全て1月当たり80時間以内
・時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6か月が限度
●特別条項の有無に関わらず(※)、1年を通して常に、時間外労働と休日労働の合計は、月100時間未満、2~6か月平均80時間以内にしなければなりません。
(※)例えば時間外労働が45時間以内に収まって特別条項にはならない場合であっても、時間外労働=44時間、休日労働=56時間、のように合計が月100時間以上になると法律違反となります。
☆上記に違反した場合には、罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科されるおそれがあります。
●今回の改正によって設けられた限度時間(月45時間・年360時間)はあくまで時間外労働の限度時間であり、休日労働の時間は含まれません。一方で、今回の改正による、1か月の上限(月100時間未満)、2~6か月の上限(平均80時間以内)については、時間外労働と休日労働を合計した実際の労働時間に対する上限であり、休日労働も含めた管理をする必要があります。
●建設事業・自動車運転の業務・医師の事業・業務については、上限規制の適用が2024年3月31日まで猶予されます。
労働時間の適正な把握
使用者には、労働時間を適正に管理する責務があります。労働時間の把握はタイムカードによる記録等の客観的な方法や使用者による現認が必要となり、その記録は3年間保存する必要があります。
「所定」と「法定」の違い
いわゆる「残業」というと、会社で定めた「所定労働時間」を超える時間のことを指すと考える方が多いのではないでしょうか。法律上の「時間外労働」とは、労働基準法で定められた「法定労働時間」(1日8時間・1週40時間)を超える時間のことをいいます。一方、法律上の「休日労働」とは、労働基準法で定められた「法定」休日に労働した時間のことをいいます。労働基準法では原則として、使用者は労働者に対して毎週少なくとも1回休日を与えなければならないとされています。このため、「法定」休日とは、1週間につき1日の休日のことをいいます。
☆今まで、限度基準告示によって決まっていた時間外労働の上限が、4月から中小企業も法律によって決められ、最悪の場合は罰則が科される場合があります。上限規制に対応するには、労働時間の適正な把握と時間管理がなお一層重要となります。労働時間管理でお悩みの事業所様は当事務所までご連絡ください。
○当事務所からのお知らせ
・労働保険料第3期分の納付について
口座振替の事業主様は1月14日(火)が振替日、 口座振込の事業主様は1月31日(金)が振込期限 となっております。今一度ご確認下さい。
後記
明けましておめでとうございます。
いよいよ「働き方改革」関連法が本格的に施行されます。
・時間外労働の上限規制が中小企業にも、本年4月1日施行されます。
(詳しくは、今回の事務所ニュース本文をご覧ください。)
・正規雇用労働者と非正規労働者の間の不合理な待遇差の禁止。(本年4月1日施行※中小
企 業は来年4月1日施行)
特に「時間外労働の上限規制」については早急に対応が必要です。前提として時間管理を
適正に行うことが必要です。
また「正規雇用労働者と非正規労働者の間の不合理な待遇差の禁止」についても、待遇差
が不合理でない場合は、説明する義務が生じます。待遇差が不合理な場合は、差額を請求さ
れる可能性があります。中小企業においては、あと1年数カ月ありますが、賃金制度を見直
す必要があるため検討に要する時間が必要です。特に定義がはっきりしていない手当がある場合
には見直しが必要です。
当事務所はこれらの対応についてお手伝いさせて頂きます。
今年は庚子(かのえ・ね)年です。「庚子は変化が生まれる状態、新たな生命がきざし始め
る状態」だそうです。新しいことにチャレンジするのには適した年のようです。
本年も宜しくお願い申し上げます。