事務所ニュースVol.255 02.02賃金等請求権の消滅時効の在り方について
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2020年2月1日
事務所ニュース Vol.255
賃金等 請求権の消滅時効の在り方について
社会経済情勢の変化に鑑み、民法の一部を改正する法律(平成29年6月2日公布)により、民法(明治29年法律第89号)について、消滅時効の期間の統一化等の時効に関する規定の整備、法定利率を変動させる規定の新設等が行われました。(施行日は、令和2年4月1日)
民法の消滅時効の規定が整備されることに伴い、当該規定の特例である労働基準法第115条の賃金債権等に係る消滅時効についても、その在り方の検討が行われました。
〇民法の改正(令和 2 年 4 月施行)
特別法
上記図にあるように、そもそも民法上、一般債権の消滅時効は10年(民法第167条)、月又はこれにより短い期間によって定めた使用人の給料に係る債権については1年の短期消滅時効(民法174条)とされています。一方特別法にあたる労働基準法では、労働者にとって重要な請求権の消滅時効が1年ではその保護に欠けるが、10年では使用者には酷にすぎ取引安全に及ぼす影響も少なくないため、労働基準法第115条(時効)において2年間と定められています。
〇改正民法による消滅時効関連規定の改正趣旨
今回、改正民法により、民法の消滅時効関連規定については、現行の労働基準法第115条の2年間の消滅時効期間の根拠となった使用人の給料等に関する短期消滅時効の規定が廃止されるとともに、①債権者が権利を行使することができることを知った時(主観的起算点)から5年間行使しないとき、又は、②権利を行使することができる時(客観的起算点)から10年間行使しないときは時効によって消滅するとし、起算点も含めて大幅な改正が行われました。この改正の趣旨としては、現代では合理性に乏しい短期消滅時効の規定を廃止し、時効期間の統一化・簡素化を図るとともに、短期消滅時効を廃止した結果、単純に消滅時効が一律10年となると、消滅時効期間の大幅な長期化により弁済の証拠保存のために費用が増加するといった懸念が示されたこと等を踏まえ、主観的起算点から5年の消滅時効期間が新設されました。
〇労働基準法上の賃金請求権の消滅時効期間
改正民法により短期消滅時効が廃止されたことが労働基準法上の消滅時効期間等の在り方を検討する契機となり、また、退職後に未払賃金を請求する労働者の権利保護の必要性等も総合的に勘案し
・賃金請求権の消滅時効期間は、改正民法による使用人の給料を含めた短期消滅時効廃止後の契約上の債権の消滅時効期間とのバランスも踏まえ、5 年とする
・起算点は、現行の労働基準法の解釈・運用と踏襲するために、客観的起算点を維持し、これを労働基準法上明記する
こととなりました。ただし、経過措置として当分の間は、消滅時効期間は3年で運用されます。
〇賃金未払請求
事業主として懸念されるのが賃金未払請求です。
現行の2年間から3年間になっただけでも、かなりの金額になります。
例えば、月給30万円、1か月の平均所定労働時間150時間の労働者がサービス残業を毎月30時間していたとします。
毎月の未払残業代は75,000円(30万円÷150時間×1.25×30時間)になり、2年間では75,000円×24か月=180万円、3年間では75,000円×36か月=270万円になります。もし5年間になった場合は75,000円×60か月=450万円と、とてつもない金額になってしまいます。
こうならないためにも、普段から勤怠管理をきちんとし、残業代も毎月きちんと支払わなければなりません。「従業員が文句言わないから自分の会社は大丈夫!」「見込み残業代を支払っているから大丈夫!」と思っていてはあとで大変なことになりかねません。見込み残業代も見込み残業代で計算した時間よりも実際の残業時間が多い場合は、差額を支払わなければなりません。
賃金未払請求をされないためにも今一度、勤怠管理等の見直しをしてみてはいかがでしょうか。
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後記